刺し子の世界を覗いてみて、その楽しさや奥深さにすっかり魅了された私ですが、その中でも面白いなあと、特に感じているのが、一目刺しです。
縦、横、斜め。決まった法則に沿って刺していくと、次々と表情が変わってくるのが本当に楽しく心躍ります。苦手な方眼線引きも、目的のためなら頑張れるようになりました。笑
さて。
去年の夏の終わり頃、コースターを試作したときのことです。
六文銭刺し(銭形刺し)アレンジを刺していました。並べるように四角を刺してから、斜め線を足して六文銭の形にしていくのですが、途中、残った四角がビルの窓のように見えてきました。その印象から、ふと、ある景色が浮かんだのです。
その後ずっと心に残っているその風景を、今回、形にしてみようと思いました。絵を描くように刺し子してみるのも、とても楽しそうですし(*^^*)
■図案描きと布の準備
まずは、ノートのデッサンをもとに図案描きです。ネットで4ミリ方眼をダウンロードし、2枚印刷して1枚は図案描きに、もう1枚は厚紙に貼ってカットし、型紙を作りました。
✻ダウンロードはこちらからさせていただきました↓
普段は、5ミリ方眼の工作紙をそのままカットして型紙にすることが多いのですが、今回、細い手縫い糸を使って刺し子をするため少し密な方が望ましく、4ミリ方眼線が欲しかったのです。
今回の刺し子は、白いリネンをキャンバスにします。
リネンは水通ししてアイロンをかけ、糸を1本抜いてその抜き跡を目印にハサミでカット。縦も横も、必要なサイズに合わせて糸抜きして裁断。もう一度アイロンをかけます。
糸を抜くときは、目打ちなどで数センチ引き出した後、布に寄った皺を少しづつ向こう岸までずらしていく、という感じでゆっくり行うと、上手くいくようです。
ちょっと面倒ですが、こうすることで、布をまっすぐ整えることができます。
4ミリ方眼の型紙を布に置き、ずれないようにマステでとめて、縦方向に印付け。マステの位置を変えて、横方向に印付け。この印をつなげて、方眼線を布に引きます。
やっぱり、ここが一番緊張するし疲れます。笑
でも、ここさえ終われば、後は楽しい刺し子タイムが待っているのです♬
今回の図案には、木と、満月、玉ボケのサークルも入りますので、こちらも布に描き加えました。玉ボケのように小さな円をたくさん描くときには、テンプレート定規を使うと便利。100円ショップで手に入りますね♪
下描きには、熱を加えると消えるフリクションペンを使いました。飾ることを想定しているからですが、もしも食卓に置くものでしたら、水で消える手芸用のペンの方が良いかもしれません。
■刺し子でお絵描き
図案を見ながら、糸を刺していきます。ブルーの四角が窓になり、その外の六文銭刺しアレンジが、夜空に見えたらいいのですが・・・
次は、月です。こちらは、十字花刺しアレンジにしました。
輝くような模様がピッタリな気がして:*.゚・
木や玉ボケも刺していきます。ストレートステッチやフライステッチ、バックステッチ、ランニングステッチを使いました。
今回の糸は全て、ダルマ家庭糸の細口。色がとても可愛くて、是非使ってみたかった糸たちです。糸色に名前が付いていました。
29 青藤 (夜空と窓)
16 ひよこ (満月)
36 白ねず (木)
23 はっか (玉ボケ)
か、かわいすぎる・・・
ひよことか、はっかとか♡
■きっとあの歌を聴いたから
ずっとずっと昔、ある流行歌を聴いて、胸に残ったフレーズがありました。
ねえ私 はじめて気付いた
それぞれの窓に 愛があるのね
きっと私と あなたのように
心を支えあってる
それを初めて耳にしたとき、なぜか心が震え、涙がこみあげてきたのを覚えています。
「ビューティフル・ミー」。
大橋純子さんが歌っていました。1979年。私はまだ少女でした。
昨日まで、冷たく感じられて嫌いだった街。でも、愛する人と結ばれ突然あたたかく輝いて見えるようになった、今では知らない人さえとても愛おしい、と。ずっと自分を美しいと思えなかった人が、愛を見つけて変わり、生まれてきて良かった、人生が今はじまるのね・・・と。そういったストーリーを歌い上げている楽曲でした。
そんな大人の愛など知る由もない少女の私が、あんなに胸を打たれたのは、大橋さんの歌唱の素晴らしさに圧倒されたことが大きいでしょう。でも、そのとき心に浮かんだ景色は、しっかり胸に刻まれたようです。それは、夜の団地やマンション街を歩くとき、何度もあの歌を重ねて見上げてしまうほどでした。
そして、去年の秋。夫と散歩した帰り道、夕刻の灯りのともり始めたマンションを見上げながら、この歌のことを思い出して彼に聞いてみました。こういう歌、知ってる?と。
その翌日、大橋純子さんの訃報を聞いたのでした。
特にファンだったというわけではありません。でも、「ミュージックフェア」などTVの歌番組で彼女の歌声が聞こえれば、必ず釘付けになっていました。あの歌声が好きでした。
思い出して、懐かしくて、とても寂しく悲しいのに、感謝もしていて。
あの晩、複雑な気持ちでご冥福をお祈りしました。
コースターの刺し子で「窓」をイメージしたことがきっかけで、作ろうと思った今回の作品。でも実は、もっともっとさかのぼって、あの歌を聴いたことで生まれたようにも思えるのです。
昭和の、歌謡曲が元気だった頃。郷愁と愛への憧れ。人の優しさ。
「月あかりのまち」を制作中、さまざまな思いが胸をよぎりました。
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